「記念写真とか、ハイ・チーズとか言って撮るような写真って、なんかイヤ」と彼女は言ったことがある。「なんか、写真がわざとらしいから。みんなどこかしら何か作ってるから」
「うん。」と僕はそのとき少し間をおいて答えた。「確かにそうかも知れない」
僕も少なからずそう思うことはある。記念写真で撮られた僕の写真にまともなものはほとんどない。妙にかしこまっていたり、或いは作り笑顔だったり。でも記念写真のすべてが悪いわけじゃない。時には記念写真だって必要なときがある。そのとき誰が何処で何をどうしたかについて、そのほんの一欠片を写真は教えてくれる。たとえそれがありふれた記念写真であっても。