25年前に知ったイタリア料理の馴染みのレシピもアップデートしないとねという話。
昨日、カポナータを作った。その日だけでなく翌日も食べられるようにと多めに作った。レシピは大学生のときに本で知ったものだ。

レシピといっても難しいものではなく、「野菜をそれぞれで炒めて、最後にトマトソースで和える」というレシピ。それぞれの野菜の食感を大事にした野菜の炒め煮という印象のレシピだ。
誰のレシピだったかはきちんと覚えていない。大学生の時に買ったイタリア料理の本は、落合務さん、カルミネさん、日高良実さん、吉川敏明さんによるものなので、そのどれかだと思う。いまでは大御所の方々ばかりだ。
昨日作ったカポナータもそのレシピを踏襲した「我が道カポナータ」だ。大きめにざく切りしたナス、ズッキーニ、タマネギ、カラーピーマン、それにオリーブを5粒とケッパーをスプーン1杯ぐらい。それとトマト缶。味付けは塩と白ワインぐらい。
野菜はそれぞれ少しの塩で炒めてボウルに足していく。トマト缶と白ワインとオリーブとケッパーでトマトソースを作り、それもボウルに入れて、ざっくりと混ぜて冷蔵庫で冷やした。
とてもおいしかった。夏ということもあって、しっかりと冷やしたカポナータはおいしい。それぞれの野菜の食感も違って楽しい。まだ今日の分もある。

で、ふと「イタリア人によるカポナータのレシピを調べよう」を思い立った。
数年前からイタリアの食文化の勉強を続けていて、書籍やWebサイトをたくさん見ている。どちらかといえば知らなかった情報を知り、知らなかった料理のレシピを知ることが中心になる。書籍を読んでいて期せずして昔知った情報をアップデートすることはあるけれど、わざわざ25年前に身につけた情報を調べ直すことはあまりない。
カポナータのイタリアのレシピを調べていてちょっと驚いた。「ビネガーと砂糖による甘酸っぱい味」が特徴の料理だったのだ。
カポナータといっても地域によってレシピが異なり(イタリア料理は地方料理の集合体なのでよくあることだ)、一般的にはシチリア島のカポナータがよく知られている。それでもシチリアの各地域で作り方が異なるらしい。
とりあえずパレルモ(シチリアで一番大きな都市)のレシピは、「ざく切りのナスは揚げ、それにタマネギ、セロリ、オリーブ、ケッパー、トマトソース、ビネガーと砂糖」というもの。冷製でも温かい状態でもOK。「ビネガーと砂糖による甘酸っぱい味」はもちろんのこと、「ナスは揚げること、タマネギはみじん切り」というルールもある。
そうなんだ。カポナータは甘酸っぱい食べ物だったんだ。知らなかった。アップデートしなければいけない。
現代ではカポナータはナスを中心とした野菜の料理だそうだけど、必ずしも「野菜のみ」というわけでもないらしい。歴史的には魚を使った料理を起源とする説もある。シチリアは独特の食文化だし、おそらくアラブ経由で海路で伝わった料理だろうから、魚を使っていても不思議ではない。
25年前に知ったレシピでは「甘酸っぱい味の料理」という印象はなかった。ざく切りにした野菜それぞれで火を入れてトマトで合わせる、という内容は大きく間違っていなかったけれども、明日以降作るカポナータはきっとアップデートしたものになるはず。
少し調べていると、落合さんのレシピではあまりお酢や砂糖を使用していない(使用するレシピもある)。もちろん落合さんのレシピを非難するつもりはない。彼は彼で、黎明期にイタリア料理を日本に根付かせるべく、日本人の舌に合ったレシピを探っていたのだ。
日本人がお酢や砂糖をほとんど使用しないカポナータをスタンダードとして認識するようになったのなら、そのカポナータはジャパニーズイタリアンを構成する1メニューに成長したということだ。それは、魚のカルパッチョをはじめとする落合さんの功績の一つのはず。落合さんは偉大なのだ。
たぶん、僕がカポナータのレシピを知ったのは落合さんの書籍からかもしれない。それはそれでとてもおいしいレシピだ。
一方で、シチリアのパレルモ風のカポナータのレシピも今回知ることができた。次に作るときはそれで試してみよう。
楽しみだ。

