ポール・マッカートニーのベスト盤『Pure McCartney』にはコステロ共作曲が未収録

ポール・マッカートニー(Paul McCartney)の各ソーシャルメディアアカウントが謎の音源コラージュを公開した後に、2016年6月10日の発売が発表されたベスト盤『Pure McCartney』。グローバルで発売された前回のベスト盤が1987年発表の『All The Best!』なので、実に29年ぶり。えっと、そんなに経つんですか……。

複数のフォーマットがある中で、一番収録曲が多いのが4枚組CDの67曲。ひととおり聴くと、たぶん4~5時間かかるんだろうな。「ポールのソロ曲で4枚組のベスト盤を編集しなさい」と言われると100人が100通りのベスト盤を作るはずで、もはや万人が納得するようなものはむずかしいだろうなーという中、まずは「いい内容のベスト盤ですよね」と言っておく。きっと楽しいはず。

追記。個人的に好きなソロ時代の曲を40曲挙げてみた。
ポール・マッカートニーのソロ時代の個人的なベスト40曲を挙げてみた

という前提で、ファンとしてはやっぱりいろいろと気になるところがあるので、挙げておくことにする。

目次

アルバム別での収録曲の偏り

『Pure McCartney』は、公式の発表によれば「ポールによるパーソナル・キュレーション」とのこと。「ただただ楽しんで聴けるものにしよう」という意図だそう。なので「アルバム別にヒット曲などをまんべんなく選ぶという趣旨ではないよ」なんだと思う。

そうはいうものの、収録曲をアルバム別発表順に集計してみた。

1970年代のソロからウイングス時代、1980年代中期までのソロ時代は、だいたいまんべんなく妥当な感じの選曲だと思う(異論はあれど)。

そんな中、すでに多くの人が指摘する「Flowers in the Dirt の曲が未収録」問題。

『Flowers in the Dirt』の曲の不在

『Pure McCartney』には、不自然な感じで『Flowers in the Dirt』の曲が収録されていない。1989年発表の『Flowers in the Dirt』は、10年近く遠ざかっていたワールドツアー再開のきっかけとなったアルバムでもあり、セールスも評論家の評価も非常に高いアルバムの一つ。

エルヴィス・コステロとの共作曲「My Brave Face」をはじめ、「This One」「Figure of Eight」「Put It There」「You Want Her Too」「We Got Married」「That Day Is Done」など、ベスト盤に収録されてもおかしくない佳曲が多い。

にもかかわらず、1曲も収録されず。

ウイングスのアルバム『Wild Life』からは「Bip Bop」というお遊び曲だって収録されてるんですけれどもね。なぜなんでしょうね。

エルヴィス・コステロとの共作曲の不在

加えると、『Pure McCartney』にはエルヴィス・コステロとの共作曲は1曲も収録されていない。「McCartney/MacManus」でクレジットされた共作曲は、ポール側のアルバムやシングルで合計7曲発表されている(コステロ側のアルバムにはたぶん5曲)。

冷静に選んでも、「My Brave Face」はベスト盤収録曲として誰も文句は言わない曲のはず。むしろ収録されてほしい。

なのに収録されなかったということは、権利的な問題なのかな?

例えば、『Pure McCartney』に収録されるマイケル・ジャクソンとの共作曲「Say Say Say」は、2015年リミックスバージョンでの収録の模様。ウイングス時代のデニー・レインとの共作曲は、現在はすべて版権はポールが持っているはず(デニー・レインからの買い取り)。スティーヴィー・ワンダーとのデュエット「Ebony and Ivory」は、作詞作曲はポール単独によるもの。

そうやって見ると、共作曲のうちエルヴィス・コステロ以外の楽曲は、なんとなく権利関係(があるとすれば)をクリアしているようにも見える。エルヴィス・コステロとの共作曲だけ、ベスト盤収録として権利面で解決しなかった何かがあるのかもしれない。

仮説として、『Flowers in the Dirt』のリードトラック「My Brave Face」が『Pure McCartney』に収録できなかったので、その他の『Flowers…』楽曲の収録も見送られた、というのが可能性として考えられそう。

『Flowers in the Dirt』も近くリマスターされるだろうし(次のリマスターがこれだという噂)、McCartney/MacManus コラボレーションもひととおりまとめてくれたらうれしいんだけれども。

収録されなかったアルバム曲

その他、『Pure McCartney』に収録されなかった主要なアルバム(の曲たち)は以下。クラシックアルバムやライブ盤は除く。

  • Choba B CCCP (1988)
  • Flowers in the Dirt (1989)
  • Run Devil Run (1999)
  • Driving Rain (2001)

『Choba B CCCP』『Run Devil Run』は、オリジナル曲を含むとはいえロックンロール・カバーアルバムなので、まあ未収録も妥当かと。『Driving Rain』未収録も、まあわからなくもないというかなんというか。当時の妻Heather Millsとちょっといろいろあったようだし。

『Flaming Pie』から8曲も収録

あと、アルバム『Flaming Pie』から8曲も収録されている。いや、いいんですけどもね。『Flaming Pie』は素晴らしいアルバムだし大好きなんだけれど、そんなに収録しちゃうんですか?というかなんというか。

いや、大好きなアルバムなんですよ。

「あれ、収録されてないんだ」という曲

個人的に「あれ、収録されてないんだ」と感じた曲を挙げておく。

  • C Moon
  • Hope of Deliverance
  • Young Boy

「C Moon」。あれ、ポール、これ大好きな曲なはずですよね? あれだけライブリハーサルなどで演奏しておいて、ベスト盤には収録しないんですね……。

「Hope of Deliverance」。アルバム『Off the Ground』からは「Winedark Open Sea」という渋い曲が1曲だけ選ばれただけで、コステロ共作曲や、ライブでも演奏されるこの「Hope of Deliverance」は収録されず。

「Young Boy」。先述の通り『Flaming Pie』から8曲も収録しておきながら、アルバムからの最初のシングルだったリードトラック「Young Boy」は収録されず。なんでなんすか……。

ポールはたまにテキトーだったり雑だったりというのを感じる場面がちょいちょいあるんだけれど、この「あれ、収録されてないんだ」という曲でもそれを感じる次第。

とはいえ、きっと楽しいベスト盤のはず

いろいろウダウダ書いたけれど、とはいえきっと楽しいベストアルバムのはず。4~5時間ポールの曲を聴いて、楽しくないはずがない。これでポールの曲に触れる人が増えればいいなと思う。


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67 Tracks of Pure McCartney… | PaulMcCartney.com

ポール・マッカートニーのソロ時代の個人的なベスト40曲を挙げてみた

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