2018年以降、ポール・マッカートニーのアーカイブ・コレクション・シリーズのCDは発売されないんじゃないかな。なんとなくそんな気がしてきた(補足。無事、ちゃんと出た。最後に追記あり)。
今年2017年の経緯をおさらいしておく。2017年の3月に、『Flowers In The Dirt』がリマスターされてCDなどが発売された。豪華な「Deluxe Edition」が過去にない価格感になったり、シングルB面曲がダウンロードのみでの提供だったりと、モヤモヤする形態でのリリースだったけれども、まずは「Elvis Costelloとのコラボ作品」としてまとめられた形だった。
2017年の12月には「アーカイヴ・コレクションのうち8作品の再発」なんてのがあった。メインの売りがLPでのリリース。マニア向けのホリデーシーズン商品。まだアーカイブ・コレクションは終わっていないように見えるのに、「再発」されている。
さて。
アメリカ音楽市場は、引き続き成長を続けているものの、成長を牽引しているのは急速に売上を伸ばしている音楽ストリーミングサービスだ。2017年には売上の62%がストリーミングサービスによるもの。CDが売れなくなっているのはもう想像できるけれど(売上の16%)、ダウンロードサービスも売上を落としていて、市場における割合も19%にまで大きく減らしている。
▲The State of Music Mid-Way Through 2017 – RIAA – Medium より
音楽は、「アルバム作品」としてはほとんど価値をなくしてしまっているように思える。少なくとも「パッケージ」としては市場は完全に縮小している。
加えて先日、アップルが2019年にiTunesでの音楽ダウンロード販売を終了するのではという噂が流れた(アップルは否定)。
アップル、2019年にiTunesでの音楽ダウンロード販売を終了との報道を否定 | NME Japan
ポール・マッカートニーのアーカイブ・コレクションは、2010年にスタートして、7年間で10作品をリイシューしてきた。仮に彼の残りの作品をリイシューするとして、「プロジェクトはあと何年かかるのか」と「音楽のパッケージの文化はそのとき残っているのか」を考えれば、いまのペースでのリイシューだとプロジェクトは頓挫してしまうように思える。
アーカイブ・コレクション化されていないポールの作品は、2000年までの発表作品をカウントしてもまだ10作品ほどある。しかも『Wings Wild Life』『Red Rose Speedway』『London Town』『Back To The Egg』と、あまりメジャーではない作品が残っている。売上も従来ほどは期待できない。
ポール・マッカートニーも75歳だ。そう、75歳なんよ。プロジェクトはあと何年かかるのよ。
2018年以降、ポール・マッカートニーのアーカイブ・コレクション・シリーズのCDは発売されないかもしれない。2016年夏からポールの契約はCapitol Recordsに戻ったので(『Flowers~』はそこから最初のアーカイブ・コレクションだったんじゃないかな)、もしかすると残りの作品を一挙発表とかあるかもしれない。個人的にはもちろんパッケージでちゃんと発売されてほしいのだけれども。
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追記。はい、無事にアーカイブ・コレクションとして『Wild Life』『Red Rose Speedway』が発売された。しかもなんか、該当アルバムがそこまで一般ウケするものじゃないからか、ボーナストラックは妙に力が入っていて、なかなか高評価だったんじゃないですかね。
ただ、一番高額な限定ボックス盤に『Wings 1971-1973』というライブ盤を追加していて、入手できなかった人たちは阿鼻叫喚。僕には値段が高すぎてさすがに手が出なかった。『Wings 1971-1973』収録曲は非公式にYouTubeで聴けるけれど、ちょっとホントに単体で発売してほしいレベル。初期ウイングスの粗いライブバンドっぽさが楽しめる。
来年2019年のアーカイブ・コレクションは、少なくとも「発売40周年で『Back to the Egg』じゃない?」という噂。近い時期の作品『London Town』も一緒かもね。あと『Flaming Pie』もリマスターは終えているという謎情報もあり。