ポール・マッカートニーのニューアルバム「NEW」を聴いた。最初にひととおり聴いたあとの感想としては、なんとも「うーむ」というものだった。うーむ。なんとも表現しがたい感じの、それ。
好きなミュージシャンの新しい作品を聴くときはいつもワクワクする。で、最初の印象はいろいろあれど、何度も聴いているうちに耳になじんできて、最終的にはそれなりにお気に入りになる。ポール・マッカートニーは大好きなので、多くのポールの作品もそんな感じだ。
このアルバムも、もう「大好き」だ。全曲覚えられるほどではないけれど、まあ耳になじんできた。
でも、なんだろう。不思議な作品だし、宣伝文句で使われている「Back To The Beatles」というほど、ビートルズな感じでもない。
そりゃあ、売る側としたら「ビートルズ!」って言いたいだろうし、その方が売れるし、新曲「NEW」は確かにビートルズ的なアプローチだし、来日公演が迫っているラッキーなタイミングでもあるので、大きく売上を伸ばしたいというのもわかる。
みんながイメージするようなビートルズ的な曲は、リードトラックでもある「NEW」ぐらいだろうね。あと「Queenie Eye」も中期~後期ぐらいのビートルズっぽいポップチューンだ。でも、アルバムをまとめて聴くと、よく言えば「意欲作」、素で表現すると「ちょっとまとまりない感じ」。そんな風には感じる。
2001年の「Driving Rain」の若い力を借りた感じ、2005年の「Twin Freaks」のテクノロジー的なアプローチ、2005年の「Chaos And Creation In The Backyard」のビートルズ的な表現やアプローチ(「ビートルズ的」と言うならこのアルバムの方だと思う)、2007年の「Memory Almost Full」のバンド的なアプローチ、そして2008年のThe Firemanとしての「Electric Arguments」のオルタナティブなアプローチ、それぞれが全部放り込まれた「意欲作」的な。
というか、ロックアルバムとしての前作「Memory Almost Full」からもう6年も経っちゃったのか。
そういう雑食的な、ビートルズでいうところの「ホワイトアルバム」のような感触が、「Back To The Beatles」なのかも。取り組む姿勢としてのそれ。
1曲目の「Save Us」も、こんなに密室的なハードめのロックな曲は、ポールにはなかった曲だと思う。曲によってはそういった閉塞感を感じたり、テクノロジーの匂いのするアレンジがされていたり、その一方でアコースティック・ギターをざくざく弾くような曲もあったり、「NEW」みたいな名刺的なポールっぽい曲もあったり、まあ総じて「ポールらしい」といえばそうだと思う。いい意味でも悪い意味でも「雑な」感じのポール。
でも、「ん?」とか「お?」とかそういう驚きを感じる作品を、70歳を超えた英国紳士が発表したと思うと、この爺さんは隠居するつもりはまったくないのだなと安心もしたり。
日本に来てくれることになってよかった。もう来ないのかと思ってた。前回来日した2002年のライブは大阪ドームで見た。あれから11年も経つのかと思うとそれはそれで恐ろしいんだけど、ニューアルバムの発表直後に日本公演というこれ以上ないタイミングは楽しんでこようと思う。
わーい。
長生きしてください。本当に。
あ、あと、Web上では長く「マキタニ」を名乗っていますが、由来は「McCartney」です。