短編小説、読み物– category –
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規格に足りない男の話2
いやあ、お客さん、いまシューズメーカーは男ものは25.5のサイズからしか作っていなくてですね、24.5とかないんですね。… -
僕はもう走ることができない
僕はもう走ることができない。残念ながらできないんだ。うん。別に悲しくはないんだけど、まあそういうこともあるよね、ぐらいに思っている。そう、僕はもう走ることができないんだ。 -
僕は鳥
僕は鳥。 -
舟
大海原には潮があり 舟は漕がなくとも流れに乗ります 大きな舟は揺れも小さく ゆったり進むことでしょう 皆が漕げばより速く 舵をとれば向きも定まります 小さな舟は揺れも大きく ひっくり返るかもしれません 足を踏ん張り四方見て 皆必死に櫂を握るのです... -
窓を開ける
僕は窓を開ける。道路を車やバスが走る音が聞こえる。鳥の鳴き声がする。犬の鳴き声がする。窓を開けていればきっと何かいいことが起きそうで、僕は窓を開ける。 僕は窓を開ける。朝のわずかな時間だけ太陽の光が部屋に差し込む。もちろん雨の日は雨が吹き... -
革靴へ
2001/08/19 新しい革靴。 「誰か気がついてよ」と思うけどわざわざこっちから言うほどでもなく。 慣れてないので歩きにくい。 足がつりそうだ。 やっぱりもう一つ小さいサイズにしとくべきだったと思う。 靴擦れしそうだ。それは痛そうだ。痛そうだ。絆創... -
愛しのウクレレ
愛しのウクレレ。 君はソフトケースの中でじっと僕を待っている。 君はかまって欲しいから、決まってチューニングをはずして僕を待っている。 僕は「仕方がないなあ」とかなんとか言いながら君を抱きかかえ、 そしてポロンポロンと一弦ずつ音を合わせる。 ... -
She’s Just My Little Girl
「記念写真とか、ハイ・チーズとか言って撮るような写真って、なんかイヤ」と彼女は言ったことがある。「なんか、写真がわざとらしいから。みんなどこかしら何か作ってるから」 「うん。」と僕はそのとき少し間をおいて答えた。「確かにそうかも知れない」... -
小さな手を握って
「何やってるのよ、早く出てきなさい」 ちょうど僕の後ろで女の人の声がした。ブランドショップや雑貨屋の入る近未来的な佇まいのHビルの1階吹き抜けのところ。ただでさえ人がごった返す土曜日。午後6時にアイドル・グループのイベントが広場で予定されて... -
僕は雀を埋めに
その日、僕は死んだ雀を埋めに行った。 雀の、というより野鳥全般に言えることだが、その死が人に見られることは滅多にない。大抵は雑木林や森の木の下でひっそりと息絶え、ものの数時間のうちに小動物や昆虫や微生物などによって解体分解され、そのまま土... -
ア・テイスト・オヴ・ホットミルク
その1 (2001/01/26) 「カタン」とミニ・コンポの電源が入ってFM放送が流れ出した。それから1、2分すると、今度は目覚し時計が鳴り始める。賢いのか鬱陶しいのかよくわからないけれど、この目覚し時計は3分毎に鳴るようになっている。僕は3分毎に鳴る目覚し... -
港町の話
そこは港町だった。良くも悪くも「おっさん臭い町」だった。僕の住んでいたマンションからすぐのところに船寄せの港があり、昼過ぎになると漁船がカモメと共に帰ってきた。風は常に湿気ていたし、髪は少しベトベトした。 不定期にもらえた休みの日は、基本... -
オモイデ・スパゲティの作り方
鍋に水をはる。スパゲティを茹でるので、できるだけたっぷり水を入れる。そして水道の蛇口を閉め、蓋をして鍋を火にかけ、換気扇のスイッチを入れる。シンとした空気のキッチンを、換気扇の静かな「ゴー」という音が埋める。 「はかり」を出す。透明なプラ... -
鼠
そこは、一年の半分以上の日が曇りと雨というところだった。たとえ朝がどんなに雲一つなく晴れていても、午後になれば当たり前のように真っ黒な雲が広がってきて土砂降りになってしまうような、そんなところだった。自転車で通勤していた僕は、スーパーで...
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