「大人のサイゼリヤ」ミラノ食堂 高田馬場店の話をしようか

「大人のサイゼリヤ」と勝手に呼んでいたお店があった。お店の名前は「ミラノ食堂 高田馬場店」。正式には「ミラノ食堂マリアーノ 高田馬場店」。

サイゼリヤの別業態「ミラノ食堂マリアーノ」の2号店として2021年10月にオープン。とてもお気に入りのお店だったけれど、残念ながら2022年8月にわずか10カ月という短い期間で閉店してしまった。同時に別業態の8店舗全店も一斉に閉店。ミラノ食堂 高田馬場店はそんなに短い期間だったのかと改めてびっくりする。

「大人のサイゼリヤ」らしいメニューのラインナップに、当時は将来の展開などに勝手に淡い期待を抱いていた。閉店してしまったのはとても残念だけれど、記憶から消えてしまうには惜しい存在。なのでできる限り記録として残そうと思い、この記事を書いている。


▲イタリアンデリ3種盛り合わせ

目次

ミラノ風ドリアのファーストフード業態としてオープンした1号店

「ミラノ食堂」は、2020年11月に日本橋茅場町店を1号店として東京都中央区にオープンした。当初はサイゼリヤの「ミラノ風ドリア」を軸としたファーストフードの業態としてのスタート。コロナ禍におけるサイゼリヤの方向性の一つを示す新業態として多少の注目を集めた。

その後すぐ、日本橋茅場町店は「ミラノ風ドリア推し」を少し弱めて「スパゲッティとミラノ風ドリア」を中心としたメニュー構成になる。そこからは2022年8月の別業態全店一斉閉店まで、スタイルは大きく変わらなかった。

2号店の高田馬場店は「大人のサイゼリヤ」

1号店のオープンから約1年後の2021年10月、2号店の高田馬場店がオープンした。1号店とは異なり、当時のサイゼリヤが取り入れていた「サパースタイル(軽い夕食)」を高田馬場店のコンセプトとして打ち出してきた。


▲サパープレート

ランチは変わらず「スパゲッティとミラノ風ドリア」のファーストフード形式で、15時からは夜メニューになりサパースタイルでの提供になる。夜メニューは少し大人向けのメニューとワインだ。プロントと似たスタイルかもしれない。


▲ディナーメニュー例(2022年6月23日)

その後「サパースタイル」という言葉を使わなくなったものの、「ランチはスパゲッティとドリア、夜は大人向けメニューとワイン」のスタイルを維持した。それが「大人のサイゼリヤ」と感じる所以でもある。

お気に入りのメニュー

そんな「大人のサイゼリヤ」ミラノ食堂 高田馬場店。1号店の日本橋茅場町店には興味を抱かなかったけれども、2号店の高田馬場店は俄然気になった。なのでオープンした10月に行ってきた。もちろん夜だ。

行ったのはオープン間もない2021年10月27日。楽しみにして行ってきたし、料理もおいしかった。それはそれとしてすごく満足。

一方でそれとは別に、期せずして「店内で20数年ぶりに会いたかった人に会う」という大事件があった。それは僕がミラノ食堂 高田馬場店を推すことの一因にもなった。

でもその話は長くなるので最後にする。

ミラノ食堂 高田馬場店には合計8回行った。ディナーに5回、ランチに3回。ちょうどコロナ禍で外出自粛のモードだったこともあり、もっと行けたかもしれないと思うと悔やまれる。

ディナーメニューもランチメニューも両方楽しんだ中で、お気に入りのメニューをいくつか挙げてみる。

青豆のスプレッド

「青豆のスプレッド」。「イタリアンデリ3種盛り合わせ」で選べるスプレッドの一つ。

美しき緑色。サイゼリヤの大好きなメニュー「青豆の温サラダ」の青豆をつぶしたスプレッドだ。付いてくるパンに塗っていただく。

サイゼリヤの青豆をご存じの人ならわかると思うけれど、グリンピース特有の匂いもなく、豆の甘さを楽しめる。最の高である。


▲青豆のスプレッドはイタリアンデリ3種盛り合わせで選ぶことができた(当初のサパープレート)

青豆のトマト煮

「青豆トマト」。これも青豆のメニュー。青豆をトマトソースで煮てペコリーノロマーノをかけたシンプルなメニューながら、すてきな一品。

彩り野菜のカポナータ

「カポナータ」。季節の野菜をトマトソースで煮たカポナータ。アンチョビの効いた大人な味。

カプレーゼ

カプレーゼ。サイゼリヤのメニューにもあるバッファローモッツァレラに、セミドライのトマトを合わせた一品。

バッファローモッツァレラが甘くておいしいのはわかっていたけれど、トマトが甘くて濃い味なのに驚いた。野菜はお店でセミドライにしているらしく、旨みがすごい。

カリフラワーマウンテン

カリフラワーマウンテン。途中から看板メニュー的な扱いになったメニュー。山のようなカリフラワーにたっぷりのホワイトソースをかけて焼いた一品。ほんのりカレーっぽいスパイシーさ。楽しいしおいしかったメニュー。

彩り野菜のアラビアータ

彩り野菜のアラビアータ。先ほど紹介したカポナータをふんだんに使ったアラビアータ。そりゃおいしいよね。

ブロッコリーのオムレツ

ランチタイムのサイドメニューとして選べたブロッコリーのオムレツ。グランモラビアチーズとオリーブオイルをかけていただく。このタイプのオムレツは大好物。


▲ほうれん草のオムレツもあった

エスプレッソのアフォガート

エスプレッソのアフォガート。最高においしかった。

ほら、アフォガートって比較的よくあるイタリアンなドルチェだし、バニラジェラートにエスプレッソをかけただけでしょ?と思うじゃないですか。

驚きのおいしさだったんですよ。エスプレッソの香りがすごいし、バニラジェラートの甘さとベストマッチ。

メニューの変遷

新業態らしく、比較的短いサイクルで改善が見られた。メニューも何度か変更になっている。


▲2021年10月のメニュー


▲2022年3月のメニュー。説明が加えられて少しわかりやすくなった


▲2022年3月、壁に張られたおすすめメニュー


▲2022年4月、おすすめメニューを写真付きで


▲ランチメニュー。2022年5月


▲2022年5月は準備したテイクアウトメニューの店頭販売もしていた


▲2022年8月のメニュー

復刻版のミラノ風ドリアや、ドリアをベースにしたライスコロッケもあった

他にも紹介しておかなければいけないメニューが多い。

「クラシックドアリア ミートボール添え」は、復刻版の「ミラノ風ドリア」。

いまのサイゼリヤのミラノ風ドリアはターメリックライスを使用しているけれども、かつてはケチャップライスを使っていた。僕がいた20数年前もケチャップライスを毎朝仕込んでキャセロールに詰めていたので、僕の知るミラノ風ドリアはケチャップライス版だ。そのかつてのレシピに寄せた「クラシックドリア ミートボール添え」として、ミラノ食堂のメニューに並んだ。

「ライスコロッケ」。いわゆるアランチーニ。ランチタイムのサイドメニューとして選べた。

店舗ではちゃんとしたメニュー紹介を見かけなかったけれど、実はこれはドリアをベースにしているのだ。


▲「ミルキーでコクのある特製ホワイトソースを使ったドリアをベースにしたライスコロッケ」

個人的にはとてもおもしろいと思っていて、サイゼリヤのメニューに転生してほしいなと思っているメニューの一つ。ほら、本来のイタリア料理にはないミラノ風ドリアがベースとなってイタリア料理のアランチーニになっていると思うと、ストーリーがあってすごくいいなと思うんですよ。

フィグチーズサンド。イタリアではスイーツやワインのおつまみとして定番の「いちじく」を、これまたクリームチーズという定番の組み合わせでミニフィセルに詰めたメニュー。

おいしかったんだけど、お店で注文するにはポジションが難しそうなメニューに感じた。デザートにはちょっと大きいし、食事のパンとしてチョイスするには個性強め。ちょっともったいなかったかもね。

「プロシュートといちじく」の組み合わせも良かった(左上)。

「イタリアンデリ3種盛り合わせ」はいろいろ組み合わせられて楽しめた。

「シチリア産ツナとトマトのレモンパスタ」もおいしかった。ツナとオリーブアンチョビペースト、そしてルーコラ。

いろいろ思い出してると、また食べたくなってくるな。

一番最初の訪問のときに店長さんをはじめ従業員さんに覚えていただいたようで、お伺いしたらご挨拶をいただいたりなど良くしていただいた。本当にありがとう。皆さんお元気にされていらっしゃるだろうか。

行ったのは合計8回。もっと長く続いてほしかった。


▲一番最後にいただいたメニューの組み合わせ。2022年8月26日(金) ランチ

20数年ぶりに会えたかつてのエリアマネージャーは新事業の担当役員だった

実は一番最初にミラノ食堂高田馬場店を訪問したとき、会いたかった人に20数年ぶりに会えたという個人的な大事件があった。

Uさんは、20数年前に僕がサイゼリヤにいたときにお世話になった人の一人。所属店舗のエリアマネージャーだった人だ。僕が辞めた後もニュースや報道で数回見かけた。10年以上前に北京サイゼリヤ(北京薩莉亜)の社長として朝のテレビニュースで唐突に見かけたときはすごくびっくりした。

そして僕がミラノ食堂に行きたいと思っていた頃、Uさんは新規事業開発の役員だった。新事業なのでもちろんこのミラノ食堂も担当されていた。僕はサイゼリヤウォッチャーなのでそれを知っていた。サイゼリヤの別業態に通えばいつかUさんに会えるかもしれないというのは理解していた。

その日は唐突にやってきた。僕が初めてミラノ食堂高田馬場店に行ったとき、たまたまUさんも仕事でミラノ食堂高田馬場店にいたのだ。

ミラノ食堂高田馬場店では当時、ディナータイムでも入店してすぐの入口レジで注文を取るスタイルを取っていた。僕は入店してアルコール消毒をし、初めての注文をした。そのとき、たまたまアルバイトと思われる従業員さんにオーダーがうまく伝わらなかった。従業員さんに助けを求められて厨房から顔を出したのが、別の用事で来ていたUさんだった。

僕は「あっ」と気付いた。マスクをしていてもわかった。間違いない、Uさんだ。

「お忙しいところ大変恐縮ですが、Uさんでしょうか?」と勇気を出して声を掛けた。「はいそうですが、どちら様でしょうか?」とUさん。

僕は軽くマスクを取り、「20数年前に神戸の六甲アイランド店でお世話になった○○です」と名乗った。

うれしいことにUさんは僕を覚えてくれていた。

店内で食事をしているとUさんがやってきて、10分ほどお話しできた。彼が初めてエリアマネージャーになって最初に入社してきたのが僕らの代だったらしく、それでよく覚えているらしい。近況を軽く報告し、「本当にお久しぶりです。実はUさんには会いたいとずっと思っていました」とお伝えしたりした。

短いながらもしばらく話をしている中、Uさんに唐突に聞かれた。

「もしかして、マキタニさん?」

意外にも早くバレました。「はい、マキタニです」と僕もiPhoneでTwitterアカウントを見せる。

「よくわかりましたね」

「実はこの前、マキタニさんが高田馬場のミラノ食堂に行くつもりと投稿していたから、いつ来るんだろうねーとみんなで噂していたよ」

おそらくこのタイミングで、「この人がマキタニさん」と店長さんをはじめ従業員さんに認知されたんだと思う。

その日は少し興奮したので、その後近くのサイゼリヤに行ってドルチェとラコンブリッコラをいただいて心を落ち着かせた。

Uさんとは後日、改めて夜に食事をする機会をいただいた。懐かしい話をたくさんした。当時の同期や先輩方、後輩たちがまだ多く在籍していることを聞いてうれしかった。その中で僕は早々と辞めてしまったんだけれど。

ミラノ食堂の高田馬場店については「夜のお店をやりたかったの」とのこと。1号店の日本橋茅場町店と異なるスタイルになったのは時期的には相当チャレンジングだったと思うけれど、大人向けの夜のお店としての位置づけだった。


▲サイゼリヤ日本橋浜町店でごちそうになった

「大人のサイゼリヤ」

僕はTwitterでミラノ食堂 高田馬場店を「大人のサイゼリヤ」として紹介するようになった。あの店は「大人のサイゼリヤ」と呼ぶにふさわしいお店だったと思う。もしUさんに再会していなくても応援していただろうけれど、個人的な思いも含んでいたのは認める。もちろん金銭等の提供はない。一度ディナーに一人でお伺いしてドルチェまでひととおり楽しんだときに、コーヒーをサービスしていただいたことはあったけれど。

本当にいい店だったんよ。僕のツイートがきっかけで行ったフォロワーさんも一定数いらっしゃったみたい。少しは恩返しになっただろうか。残念ながら閉店してしまったけれども。

ミラノ食堂 高田馬場店が営業していたのは約10カ月。わずか10カ月という期間だけで見ると失敗という評価になるかもしれない。でもこの閉店は「別業態の8店舗全店一斉閉店」という経営判断によるもの。決算説明会資料には「立地環境変化のため」とある。ちょうどそれまでの代表が退任されたタイミングでもあった。外食業界全体が厳しい環境下なので、サイゼリヤも本体へのリソース集中の一環だろう。


▲閉店のお知らせ

ミラノ食堂 高田馬場店は「大人のサイゼリヤ」だった。何かが今後のサイゼリヤに生かされてほしいし、また新業態として素敵なお店が登場してほしい。

サイゼリヤの別業態の情報は、公に発表されることは少ない。このミラノ食堂 高田馬場店もニュースリリースでは発表されていない。でもサイゼリヤの歴史や日本の外食史の片隅に記録としてちゃんとまとめておこうと思い、これを書いた。偶然が重なったおかげでかなり詳しいミラノ食堂 高田馬場店の記録になったかもしれない。

青豆のスプレッド、また食べたいな。

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